067347 ランダム
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主人公はケンタ

ケンタは、以前、自分が気に入らない事があると、おもちゃを投げてしまう時期があり、注意しても、優しくなだめても、なおりませんでした。そんな時期に寝られないケンタにこんなお話を聞かせた事がありました。
行き当たりバッタリで作ったお話だったのですが、ケンタの好きなものを沢山盛り込んだので、ケンタには好評でした。
即興だったので細かいところはお話をする度にちょくちょく違ってきちゃうのですが、あらずじではいつもこんなんだった…というのをここに残しておこうと思います。
子供って、自分や身の回りの人たちが出てくるだけで楽しくなっちゃうみたいで…結局最後まで眠ってくれず、何のためのお話だかわからなくなっちゃったんですけどね。
あ、そうそう。このお話は、ユウキが生まれる前に作ったお話なので、ユウキは出てきません。これから、どうユウキを絡めていくかがちょっとした悩みですね…^m^

『おかあちゃんが電車になっちゃったお話』

今から、ちょっと前のお話です。あるところに、ケンタ君という可愛いオトコノコがいました。その子は、お父ちゃんと、お母ちゃんと3人で仲良く暮らしていました。
電車とお星様が大好きで、いつもお星様を見ると「キレイだねー」と言う、とっても優しくて可愛い子だったのですが、ちょっとだけ、悪いところもありました。
それは、怒るとおもちゃを投げてしまって、おもちゃにケガをさせてしまう事でした。
ケンタ君にケガをさせられたおもちゃ達は、いつも泣いていました。「ケンタ、いつもは優しいのになぁ~」「怒ると怖いよなぁ~」「痛くて痛くて涙がでちゃうよ」
お母ちゃんも「ケンタ、おもちゃだってケガをしたら痛いのよ。自分が嫌な事があったからって、おもちゃにケガをさせてしまうのはいけないことよ」といつも言いました。
それでも、ケンタ君は、「ふうん」と知らないフリをしていました。

「ただいまー」ある日、ケンタ君がお父ちゃんと保育園から帰ってきてくると、なんだか家の中がシーンとしています。
いつもならお母ちゃんが「おかえりー」と言ってくれるのに。
ケンタ君とお父ちゃんはもう一度「ただいまー」と言ってみました。

シーン…。

急いで家の中に入ってみると…。

お母ちゃんがいないかわりに、なんと、おもちゃの部屋に、大きな大きな電車があるではありませんか。
それに、ケガをしたおもちゃたちも、どこかへ行ってしまったようです。
「おかあちゃーん。おかあちゃーん」ケンタ君とお父ちゃんが大きな声で呼ぶと…どこからか小さな声がします。

その声のする方を見てみると…大きな大きな電車でした。

「こっちよ、おかあちゃんはこっちよ、ケンタ」

よーく見てみると、その大きな電車はお母ちゃんの顔をしていました。

ビックリしたケンタ君はお母ちゃんに聞きました。「どうして、おかあちゃんは電車になっちゃったの?」

すると、お母ちゃんは言いました。
「お月様の神様が、おかあちゃんを電車に変えてしまったの、ケンタ、助けて…」

困ったケンタ君はお父ちゃんに言いました。「お父ちゃん、どうしよう」お父ちゃんも、困った顔をしています。

すると、お父ちゃんが言いました「ケンタ、ベランダのほうから何か声がするぞ!」
お父ちゃんの言うとおりベランダのほうから「ケンタ君、ケンタ君…」ケンタを呼ぶ声がします。

お父ちゃんと急いでベランダに出てみると、その声はお星様でした。
「ケンタ君。お月様の神様におかあちゃんを電車にされちゃったんだね」
ケンタはビックリしながらもお星様に言いました。
「そうなの。どうしたらいいのかお父ちゃんもわからないんだ」すると、お星様は言いました。
「お母さん電車に乗ってごらん、今から僕たちがお月様の神様のトコロまでレールをつくってあげる…」
「レールをつくってくれるの?ありがとう…」
「でも、お母さんの電車に乗るの?でも、誰が運転するの…??」
心配そうな顔のケンタ君にお父ちゃんが言いました。
「ケンタ、いつもお父ちゃんと電車のゲームしていただろう…。お父ちゃんも手伝ってあげるから、一緒に運転してみよう」
でも、ケンタ君は電車の運転なんか、したことがありません。
大丈夫かなぁ…とっても心配になってきました。でも、おかあちゃんを助けるにはケンタ君が頑張るしかありません。
お星様も「やってごらん、ケンタ君ならきっと出来るよ」と言ってくれました。
「うん!ボク、頑張ってみる。でも、キミ達、お話が出来るんだね?ビックリしちゃった」
「本当は人間とお話しちゃいけないんだ。でも、いつもキミ達人間の声は聞こえているんだよ。それに、今日は特別さ。いっつもケンタ君は僕たちの事、キレイだね…って言ってくれるからね」
お星様はケンタ君にウィンクをしました。

ケンタとお父ちゃんはおかあちゃん電車に乗り込みました。
さぁ!出発です。

「しゅっぱーつ、しんこー!!」
ケンタ君が言うと、お母ちゃん列車は空へ向かって静かに走り出しました。
「すごい!すごい!!」お父ちゃんは、なんだか嬉しそう。ケンタ君も、ちょっとだけ、嬉しくなってきました。
お星様も「ケンタ君上手だねー」と、ニコニコ…。

お家も、いつもいくハンバーガー屋さんも。コンビニも、本屋さんや保育園もどんどんどんどん小さくなっていきます。

「うわぁ~お星様がいっぱい!!」「キレイだねー」

お星様も「あ、ケンタ君だ!」「頑張って、いってらっしゃーい」とケンタ君を応援してくれます。

ケンタとお父ちゃんがお星様に見とれていると…。

キーッ、ガッシャン!

お母ちゃん電車が急に止まりました。

「どうしたんだ?」ケンタ君が前を見ると、レールが右と左の二つに分かれています。
「ケンタ、どっちに行ったらいいと思う?」

お母ちゃん列車が言いました。

うーん………。右!!※1

ケンタ君は右を選びました。
お母ちゃん電車は、右のレールを走り続けます。
くねくねカーブの曲がり道を通り、お星様のトンネルを抜けどんどんどんどん進みます。

15分くらい走ったところで、やっとお月様に到着しました。

プシュー…。
駅に止まったお母ちゃん電車を降りると、そこには2匹のうさぎが待っていました。保育園にいるうさぎちゃんにそっくりな2匹です。

「ケンタ君、お父さん、いらっしゃいませ」
「お月様の神様から聞いています。さあ、僕たちが案内しますので、ついてきてください」

ケンタ君は、少し驚きましたが、お父ちゃんと一緒なら怖くありません。
「行ってくるね。神様にお願いしてお母ちゃんを元に戻してもらうんだ、だから、お母ちゃん待っててね」
そう言うと、お父ちゃんとしっかり手をつなぎ、うさぎさんに言いました。「よろしくお願いします」

お月様の神様のところへ出発です。

うさぎさんの案内で、高い高い山をこえて、大きな大きな川を渡り…。
広い広い原っぱを歩いてどんどんどんどん行きました。

とっても長いみちのりだったけれど、ケンタ君は一度だって抱っこしてなんて言いませんでした。

お父ちゃんが心配して「抱っこしてあげようか?」と聞いた時も「大丈夫! だって、ボクがおかあちゃんを助けるんだもん」

ケンタ君は、頑張りました。

どんどんどんどん歩いて、暗い暗い森を抜けた時、目の前に大きなお屋敷があらわれました。
大きくて、キラキラ光っていて、ケンタ君がいつもお母さんに読んでもらう絵本の中に出てくる王子様のお城のようです。

うさぎさん達は言いました
「さぁ、ここがお月様の神様のお家です」
「ここからは、ケンタ君一人で行かなくてはいけません」

「一人で!?」
ここまでは、お父ちゃんが一緒にいてくれたから頑張ってこれましたが、一人でなんて、お家のお隣のコンビニにだって行った事がありません。
ケンタ君は、ちょっとだけ泣きたい気持ちになってきました。
すると、お父ちゃんが指輪をケンタの手のひらにのせて言いました。この指輪は、いつもケンタが「かして」と言っても絶対にかしてくれなかったお母ちゃんとの結婚指輪でした。

「ケンタ、頑張って行っておいで。お父ちゃんはここで待っているよ。でも、途中で怖い事や、困った事があったらスグにケンタを助けに行くから。この指輪はお守りだからね」
※2

「うん、大丈夫!!ボク、お月様の神様のところへ一人で行けるよ。お母ちゃんを元に戻してもらうんだ」

お父ちゃんとお母ちゃんの結婚指輪を握り締めて、ケンタ君は一人で神様のお家へ入ってゆきます。

「こんばんは…」
誰もいないようです。それとも、ケンタ君の声がちいさすぎて聞こえないのでしょうか。
「こんばんはー!!」
大きな声でケンタ君が言うと、今度は返事の代わりに、目の前のお部屋のドアがバタン!と開きました。

ケンタ君がそのドアの中を覗き込むと…そこにはまた長ーい廊下がありました。

ケンタ君は、思い切ってその廊下へ出てみました。

すると…バタン!!

今度は、廊下の先の先の右側にあるドアが開きました。
なんだか、ケンタ君は心細くなってきました。ケンタ君は、手の中のお父ちゃんの指輪を握り締めて、またそのドアのほうへ歩いて行きました。

すると、今度は、階段がありました。
長い長~い階段で、階段の終わりは雲の向こうにあるようです。

思い切って、ケンタ君が階段を上り始めると…。

階段の先からはきれいな音楽が流れてきました。
なんだか、いい匂いもしてきます。それは、ケンタが大好きな、お母ちゃんのリンスの匂いのようでした。

ケンタ君は、どんどんどんどん階段を上っていきました。
どんどんどんどん…。
どんどんどんどん……。

ケンタ君が階段を全部上ると…急に明るい光が見えて、その先からきれいな声がしました。

「ケンタ君、一人でよく頑張ったわね。こちらへいらっしゃい」

ケンタがその人のほうを見ると、そこにはケンタがけがをさせてしまったおもちゃたちと、一人のきれいなオンナの人がいました。

「こんばんは…あなたがお月様の神様?」

「そうです。あなたは、何故ここにきたのですか?」神様は言いました。

「ボクは、ケンタです。ここにきたのは…お母ちゃんが電車になっちゃったので、それで、助けてもらおうと思って……」
ケンタは、泣きそうな気持ちをガマンして神様に言いました。
「お願いです。お母ちゃんを元に戻して」

神様はケガをしたおもちゃ達を見て言いました。
「この子達がどうしてここにいるのか、わかりますね?」

ケンタ君は考えます。※3

「この子達はどうしてケガをしているのですか?」

ケンタ君はもっと考えました。

「おもちゃ達はなんにも悪くないのに、僕が怒って投げたからケガをしちゃったんだ」



「ごめんなさい」

ケンタ君はおもちゃ達に心から「ごめんなさい」を言いました。
今までガマンしていた涙がケンタの目から一つこぼれて落ちました。
すると…。

ケンタの足元から涙が川になって流れ始め、いつのまにか、ケンタは船に乗っています。
船は、神様のお家の中を通って、ケンタのお父ちゃんを乗せ、お母ちゃん電車が待つ駅に到着しました。
そこには、元に戻ったお母ちゃんと、ケガを治してもらったおもちゃ達が待っていたのです。

「ケンタ君ごめんね、大事なお母さんを電車に変えちゃって」おもちゃ達が謝ります。

ケンタは「ううん、ボクのほうこそ、キミ達を投げたりして、ゴメン。これからも仲良くしてね」

お父ちゃんとお母ちゃんもニコニコ笑っています。
うさぎさん達も、お月様の神様も嬉しそうです。


帰りはどうしたかって?

帰りは船に乗って、天の川を渡り、ちゃーんとお家まで帰ってきました。
お母ちゃんの腕の中でスヤスヤ眠るケンタ君の腕の中には、おもちゃ達も一緒に眠っています。

お月様もお星様もキラキラ光って、明日も良いお天気になりそうです。



おしまい


※1ここでは、必ず本人にどちらに行くかを選ばせました。そして、どっちを選ぶかによって、ちょっとだけ道のりを替えてあげると嬉しそうです。
※2ここで必ず大丈夫?一人で行ける?と聞くようにしました。必ず「大丈夫!!」と答えが返ってくるのですから不思議ですね。
※3ここでもどうしてだろうね~?って必ず聞きました。すると「ケンタがおもちゃにケガをさせたからだー」なんて、わかったようなわかんないような返事が返ってきたものです。



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